第34回家畜人工授精優良技術発表全国大会 特別講演 (5)

 そこで、少し外陰部をマッサージしてやる実験をしてみました。これも宮崎大学でやった実験です。分娩して1週間たった乳牛に肩もみ用マッサージ器で外陰部を朝晩2分間刺激してやりました。大体、雄が野外調査でかかわっていた時間数と同じ程度です。これまでニオイが重要だという報告が多いので、高鍋の家畜改良センターから1.5歳と3.5歳の雄の尿をもらいまして、それを混合したものを8cc、雌牛の鼻に振りかけてやるという処理も行いました。

 それで、子宮修復の日数、初回排卵、そして発情回帰への効果を見ました。これは直検でやりました。そうすると非常に面白い結果が出ました。陰部をマッサージしてやった乳牛では、子宮修復にはそれほど差がないのですが、初回排卵と発情回帰に効果が見られました。各区の頭数がそれぞれ、3頭、3頭、2頭、3頭ということで、統計的に有意ではなかったのですが、10%レベルでその傾向はありました。マッサージは6頭に施したのですが、そのうち2頭はマッサージした日から受け入れました。受容するというか、マッサージしても嫌がらないのが2頭でした。3頭は3回目から受け入れました。1日2回ですから、最初の日は嫌がったのですけれども、2日目の午後からは受け入れたと言うことです。最後の1頭は、15回目でやっと受け入れました。このマッサージ拒否牛の初回排卵も発情回帰も非常に遅いものでした。雌側の受容性も重要ですが、触覚刺激が発情回帰に有効だという感じを持ちました。これはもう10年以上も前の実験ですが、再度やってみたいと今思っているところです。

 先ほども少し紹介していただきましたけれども、『アニマルウェルフェア』という本を、去年の6月に書きました。アニマルウェルフェアというのは何か特殊な発想かと思うかもしれませんが、今紹介しましたように、アニマルウェルフェアが主張する最初の三つは、これまで畜産でも配慮してきた話です。そしてそれに加えてもっとストレッサーになるものがあるということを明らかにしてきたということが、アニマルウェルフェアの真骨頂の研究であります。私はこの本の中でもそれを紹介し、アニマルウェルフェアの主張とは、まさに精密飼育管理だということを述べています。本日紹介したようなちょっとしたストレッサーにも配慮するという精密飼育管理の発想ですので、毛嫌いせずに、このアニマルウェルフェア研究にも注目していただけたらと思っております。
 以上で、今日の私の話は終わりにしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。


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