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もう一つ、恐怖状況に置いたときにもストレスになるというデータを紹介します。これはブタの調査です。ヘムスワースというオーストラリアの農業研究所の人が、精力的にブタの調査をしました。ブタを近寄ってきたらなでてやる区、近寄ってきたら蹴飛ばす区と二つ作り、生産形質を比較しています。
Pleasantがなでる区でAversiveがいじめる区です。増体、初発情までの日齢、受胎率、雄が性行動できるようになるまでの日齢、分娩頭数、3週齢までの死亡率が比較されています。いずれを見ても、なでる区のほうが良くなっています。春機発動は早いし、受胎もよくするし、子供も多く生むし、子の死亡率も少ないということです。実際に殴ったり蹴ったりしなくとも、ストレス反応が起きているようです。ヘムスワースはさらに面白い実験をやっていて、普段は近寄ってきたらなでて、5回に1回だけ蹴るという取り扱いをした区も作りました。そうすると大体このAversive区と同じ反応でした。まさに恐怖ですね。実際に蹴られるわけではないのに、その人が畜舎に入ってくるとストレスになるという状況が起こるのです。
このようなことを明らかにしたというのが、家畜福祉研究の真骨頂ではないかと思います。正常行動、これを抑えることがストレスになります。あるいは恐怖というものを感じて、そのような状況がストレスになりますということです。
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もう一つ、「雄効果」という話をします。これは東京大学獣医動物行動学研究室の森教授が書いた絵です。使用の了解は取っていませんが、古い友達ですから許してくれるでしょう。
ヒツジの場合は、このように見られているだけで、それなりに効果がありますが、ウシの場合は、先ほど見てもらったように行動的な関わりが非常に重要です。物理的な接触というのが非常に大きいと思っています。
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これは、まき牛群と雌だけの群で発情回帰率を比較したものです。横軸が分娩後の経過日数、縦軸が累積発情回帰率です。これはザレスキーという人がやった研究ですが、一目瞭然、発情回帰は雄を入れることによって非常に促進されています。
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これも発情に対するまき牛の効果の実験です。上の線ががまき牛群で、下の線が雄が入っていない群です。横軸に実験スタートからの日数が書いてありますので、少し分かりにくいのですが、Bulls Inは分娩後18日でまき牛が入った時です。縦軸にプロジェステロンレベル、黄体ホルモンが取ってあります。29頭の雌群に、当て雄といいますか、副睾丸が除去された当歳の雄牛4頭を入れた実験です。放牧で、草はフェスクです。そうするとこれも極めて明瞭に、あて雄を入れると黄体が活発に動き、排卵が起こって いることが判ります。排卵の指標としてプロジェステロン1ng以上が1〜2回続くとしていますが、あて雄群でこれが起こっています。
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これも続きの実験ですが、放牧草が「ブルーステム・パスチャー」ということで、高栄養な草地だそうです。ここでは雌群は19頭、あて雄は4頭、あて雄導入が分娩後16日という条件で、全ての面で前の実験よりも好条件です。同様に上の線がまき牛群、下の線が雌だけの群です。まき牛群のみならず雌群でも排卵が起こりました。高栄養にしますと、このように排卵が起こります。それに加えて雄を入れると、さらにもっといい黄体期が作られていますという結果です。
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ところで雄効果というのは何が要因なのかということですが、いろいろな感覚が関わっているのだと思います。最初に発見されたのはマウスやラットで、ニオイが重要だとされました。その後、ヤギ・ヒツジで調べられました。ヤギ・ヒツジでの雄効果はマウス・ラットよりももっと前から農家では知られていたわけですが、先ほどの絵にありましたように、これもニオイが重要と言われています。しかしウシを見ている限りは、どうも違う。多分、触刺激というものが大きいのだろうと、これまでの実態調査からは感じてました。文献を見ると、「発情がこないウシに外陰部電気刺激をやったら発情を誘起できた」というデータがあります。
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