第34回家畜人工授精優良技術発表全国大会 特別講演 (3) |
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このように長い時間をかけて色々な行動的な関わりがあり、最終的に交尾するわけですが、何に同調しているかという話題です。これは私が学生だった頃に東北大学の正木先生がやった実験で、私も手伝ってこのデータを取りました。PGを打ってその後の行動と同時にLHサージを調査したものです。縦軸がLHレベルになっています。横軸がPG注射後の時間ということです。すると、交尾は雌側のLHサージとほとんど同期化しているということが判りました。LHサージ後、1日から1日半後ぐらいに排卵が起こるということになろうかと思います。LHサージといいますか交尾する前までに、先ほども紹介しましたように20時間前ぐらいから寄り添っていろいろな行動的関与が見られているわけです。そして最終的に交尾とLHサージが同期化させているということです。この雌側のLHサージをどのような形で雄が認知しているのか、あるいは雌側がどのような状態になるのかは興味のあるところです。行動的には雌の不動姿勢なのでしょうが。LHサージ後、発情行動が終わるまでにまた10時間ぐらいあって、その後に排卵が起こるという流れ
かと思います。
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鹿児島県頴娃町の公共牧場では、非常に楽しく仕事をさせてもらいました。雄が入っている群には、分娩後何日かたった雌だけを入れてましたが、お願いして、分娩3日後からのウシを入れてもらいました。横軸に分娩後の経過日数が取ってあります。これは3日後ぐらいから雄群に入れたものですから、ここからのデータしかありません。縦軸には、雄が雌にかかわる行動の頻度を取っています。1時間あたりの回数です。このときは、20頭から30頭の雌群に雄1頭という状況です。そうすると、このように2次曲線的に雄からの関与が増えました。ここでは発情しているわけではないのに、分娩してすぐの雌牛に対して雄はかかわり始めると言うことです。しかも徐々に増えていきま した。
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その時雄は雌にどのような行動をやっているかということです。攻撃行動もします。特に初産とか未経産のウシに対しては、雄牛は結構攻撃をしたりします。近寄ってきた場合です。この時の雄牛の年齢は7歳と10歳で、同齢の雌牛には攻撃行動は滅多にしませんでした。同齢による親和性がかかわっているのかなという考察を、その時はしました。一般に未経産とか1産のウシには、雄は冷たいものです。集合行動、近寄っていったりあるいは雌についていったり、あと鼻先を雌の体にくっつけたり頭をくっつけたりする行動です。別に押すわけでも引くわけでもないわけですが、そのようなことをよくやります。親和行動、先ほど言ったように、雌の体をなめてやるということと、じゃれあい行動です。けんかを真面目にしたら絶対に雄が勝つのですけれども、かなり雌からじゃれてきます。角や頭で雄に向かってきます。それを軽くいなすという行動をします。探査行動、これは雌の陰部以外の体、頭をかいだり、胴をかいだり、そのような行動です。性的探査というのは、陰部のニオイをかぐ、あるいはおしっこをした時にそのニオイをかぐ。あとは、陰部を鼻で揉む、舌でなめる、このような性的な行動です。性的刺激行動、陰部を鼻で揉んだりなめたりあるいは角で揉んだりする行動です。前交尾行動というのは、雌のおなかの辺りから乗駕しようとする行動、ムムと雄が特徴的な声を出しながら乗駕しようとする試みとか、あるいは後部から乗駕して雌に逃げられるとか、そのような行動です。白抜きは、雌が雄に行う行動です。雄と雌との関わりといっても、ほとんどが雄から雌への行動だということがお判りかと思います。これが非常に重要だろうということです。以上、行動にもこのような正常値というものがあって、それを適切に発現させないとストレスになりますよという紹介でした。最後の性行動のところは、これを制限することがストレスになるかどうかというデータはありませんが、自由にさせればウシはこのような性行動をしますという紹介でした。人工授精に際して、その雄の代わりをしているということに思いを馳せてもらえればという思いです。
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