第32回家畜人工授精優良技術発表全国大会 特別講演

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 次に、これらの指標の実用性を検証するために、1997年から2000年に、繁殖障害を理由に、1年以上の間隔で2回継続してMPTを実施した12牛群について、第2回目のMPT実施時に成績が改善した牛群と非改善牛群とに分け、乳期別に、要因検出指標により検査頭数の2/3以上に逸脱が認められた場合を『検出した』とみなし、その検出率を比較しました。


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 12戸の繁殖障害牛群における第1回目MPT実施時の分娩間隔は、平均433日でした。
 2回目に、繁殖成績が改善した5戸では394日、非改善7戸は433日でした。
 これら3つのグループについて、前述の要因検出指標で、どれだけ異常が検出されるかを確認しました。

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 その結果、それぞれの指標による要因の検出率は、第1回目のMPTでは半数以上の牛群で、貧血、高グロブリン、低コレステロール、低マグネシウム、削痩および低乳脂率が検出されました。
また、第2回目MPT実施時に、成績が改善した5戸では、高グロブリン、低マグネシウムを除くすべての項目で、第1回目よりも明らかに検出率が低いか、全く検出されませんでした。
 
一方、非改善7戸では、高リンおよび無脂固形分率低下はほとんど検出されなかったものの、それ以外の全項目で改善5戸よりも高率に異常が検出されました。

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検出指標作成に供した、繁殖障害群と健康群の給与飼料の特徴を見てみますと、泌乳期にコーンサイレージ15kg、濃厚飼料を15kg以上給与されていた牛群割合は、両群間で差がありませんでしたが、グラスサイレージ15kg、大豆などの油脂飼料1kg、フリーストールでTMR、および乾乳期に濃厚飼料2kg以上給与されていた牛群割合は、繁殖障害群が、健康群よりも有意に少なくなっていました。

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 以上のことから、無発情を特徴とする繁殖障害牛群では、貧血、低アルブミンなど恒常的な蛋白不足、削痩、低血糖、低コレステロール、および低乳成分率など採食不足やエネルギー不足に起因すると思われる異常が多く認められ、さらに、高グロブリン、すなわち乳房炎や蹄病など慢性炎症などの故障牛が多いことが明らかになりました。

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 したがって、無発情牛群に対する対策のポイントとしては、栄養バランスの取れた飼料、よい粗飼料をしっかり食い込ませることと、ならびに肢蹄病や乳房炎を予防して健康に管理することが重要であることが明らかになりました。




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